流れ論

人間の弱さが生み出した幻想


「麻雀には流れがある」と、長い間言われていました。

ここでいう「流れ」とは、以前の結果と目の前の1局には因果関係があるという考え方です。

 

初めに言っておきますが、このサイトはそういった流れ論に対しては否定的です。

全てのページが、麻雀に流れは存在しないという前提で書かれています。

麻雀に流れなんてない
麻雀漫画『鉄鳴きの麒麟児』より

流れ論とは

繰り返しになりますが、流れ論とはこれまでの結果と目の前の1局に因果関係があるという考え方です。

  • 3連続でアガったあとの親番は配牌やツモが良い
  • 放銃をすると配牌やツモが悪くなる
  • 不調者のリーチはアガりにくい
  • 好調者のツモは良い牌が多いので、鳴いてツモ順をずらし、妨害したほうがいい
などがあります。

なぜ流れ論は人々に信じられてきたのでしょうか。


人間は「説明できない」ものが怖い

ヒトは、肉体的に弱い生き物です。

鋭い爪や牙があるわけではなく、逃げ足が速いわけでもありません。

しかし、有史以前の我々は淘汰されることなく生き残りました。

それは、「考える」力があったからでしょう。

火や道具を使い、生存競争で生き残りました。

さらに進歩すると、様々な道具を作るだけでなく、政治や貨幣という概念を作り、運用するようにもなりました。

 

ヒトはその考える力を武器にしてきました。

考えるということは、「想像する」ことでもあります。

  1. イノシシを追いかけると逃げる
  2. 1方向だけ空けて追いかけると、空いた場所に逃げる
  3. 落とし穴や崖に誘導できる
  4. 狩りが成功する

こういったことを想像してから狩りに臨んでいたでしょう。

理屈が人間の原動力なのです。

 

しかし、理由を説明できないものに直面すると人間は恐怖を覚えます。

そして、可能ならば何か理由を付けようとします。

 

平安時代、人が病気になるのは悪霊に取り憑かれているからだと信じられていました。

病原菌は目に見えないので、当時の人は病気になる理由がわからなかったでしょう。

そこで、悪霊の存在を信じ、異変を説明できるようにしました。

理由をわからないままにしておくよりも、理由がある方が(対処できるかは別にして)安心できたのでしょう。


確率の「ブレ」

麻雀の結果は運に左右されます。

ラス(4着)になる確率が25%だとしても、それは「4回に1回は必ずラスになる」という意味ではありません。

4回打って4回ともラスになることもあれば、ラス0回ということもあるでしょう。

これを確率のブレと呼ぶことにします。


ギャンブラーの誤謬

ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)とは、主観的な経験や判断により、確率的には誤った判断を下してしまうという現象のことをいいます。

コインも表裏が出る確率はそれぞれ1/2であるという前提のもと、
  1. オモテ
  2. ウラ
  3. ウラ
  4. ウラ
  5. ウラ
この次がどちらかを当てるとき、何を考えるか?という話です。
ギャンブラーの誤謬に陥ると、
「そろそろオモテが出そう」であったり、反対に
「ウラが多いからウラ」などと考えてしまいます。
当然ながら確率的にはどちらも1/2なので、考えること自体が無意味です。
しかし、現象に理由をつけてしまうという人間の特性が、そういった思考をしてしまうのです。
確率のブレに理由を与えてしまう。
こうして生み出されたのが「流れ」です。

強い印象がそのまま残る

特定の事象の印象が強く残ったせいで、あたかもその事象が起こりやすいと感じることもあると思います。

不調時にリーチをしたが、アガれなかった。
その印象が本人の中で強ければ、「不調時はアガりにくい」と誤認してしまいます。

実際の確率と人間の体感には差があります。
そういった差が確率論とは異なる結論を導き出し、結果として流れ論と呼ばれるものの一種になっているものもあるでしょう。

結果として正しいものもある

流れ論の中には、結果として正しいと言えるものもあります。

  • 調子がいい人にはいい配牌がくる
  • 調子が悪い人は配牌も悪い

流れ論では、これらの理由は「好調者は流れが良いから」と説明されます。

しかし、これらには流れを根拠としない説明が存在します。

質問です。

オーラスにこの配牌、良いですか?悪いですか?
答えは「点数状況次第で、良いときもあれば悪いときもある」でしょう。
1000点でもいいので早くアガりたい状況ならば、この配牌は悪くありません。
食いタン(鳴いてタンヤオ)で早くアガれそうです。
 
一方、マンガン以上をアガらなければ着順が上昇しないような状況では、この配牌では微妙です。
ドラは字牌で使いづらい上に1枚も持っておらず、愚形部分が多いためメンゼンの高打点ツモは厳しいです。
しかし、鳴いて安い手をアガるのでは、大した得になりません。
同じ配牌でも、点数状況が違えば評価は違います。
点数を多く持っている者は、良い配牌の範囲が広く、基準が低いのです。
好調者は配牌が良いというのは、このことで説明できます
 
すなわち、
  1. 好調者(今まで多くアガってきたプレイヤー)は、オーラスで点数を多く持っている。
  2. 安い手でもアガれれば良い。
  3. 良い配牌の基準はアガりやすいかどうかだけであり、基準が低い。
  4. そのため、良い配牌である確率は高い。
一方で不調者は、
  1. 不調者(アガリが少なく、放銃もあったプレイヤー)はオーラスで持ち点が少ない。
  2. 持ち点が少ないと高打点が必要となる。
  3. 良い配牌とは、高打点かつアガりやすい配牌のことであり、基準が高い。
  4. そのため、良い配牌である確率は低くなる。
これが「好調者は配牌が良い」ということに対する説明です。
また、「不調者の選択は失敗しやすい」ということの理由についても、次のように説明できます。
  1. 不調者は、負けが込んで正常な判断ができなくなる
  2. したがって、不合理な選択が増えてしまう
  3. 不合理な選択は失敗しやすい
こうして、これまでの負けがさらなる負けをもたらすことはあるかもしれません。
これには対策があります。
気にしなければいいのです。
前の半荘と今の半荘はそれぞれ独立な事象です。
前の選択の結果は次の抽選に影響を与えません。
コインの表と裏は常に1/2です。
目の前の一戦、一局、一打に真剣に取り組むことだけが、麻雀の成績を向上させます。
選択の判断要素に流れ論を持ち込まないようにしましょう。